業務経験と融資の関係性
概要
新規事業における業務経験は融資審査において重要なファクターです。もともと新規事業に対する融資は回収が難しくなる割合が高い分野です。民間の金融機関ではほとんど取り扱っていません。そのうえで新規事業が軌道に乗るスピードを考えると未経験者と経験者では大きく異なるからです。
目次
1、融資申込条件における業務経験
日本政策金融公庫の新創業融資制度では雇用創出等の要件で業務経験を次のように定めています。
3.現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方でいずれに該当する方
- 現在の企業に継続して6年以上お勤めの方
- 現在の企業と同じ業種に通算して6年以上お勤めの方
4.大学等で習得した技能等と密接に関連した職種に継続して2年以上お勤めの方で、その職種と密接に関連した業種の事業を始める方
会社員として転職も含めて6年間同業種で経験があれば、融資する側から見てリスクが低いとみなせるということです。
2、融資に有利な経験年数・経験内容
(1)経験年数
一般的には年単位の事業サイクルを複数回経験すると、業務の流れやイレギュラーも含めて把握できるものです。金融機関によれば業務経験3年程度としているところが多いですが、新創業融資の場合は6年という基準で区切っています。
(2)経験内容
また大学や研究所で研究開発を行っていて、そこで開発した技術に基づいて商品化を図る場合などは経験があるとみなすことができます。専門的な知識やノウハウがある場合は勤務経験というより技術力が業務経験をカバーするということです。
3、なぜ経験が必要なのか?
大きな会社の中で一部分を任されるのであれば、業務が未経験であってもそれまでのマネジメントスキルや営業ノウハウなどで、ある程度は短い期間で実力を発揮できるかもしれません。しかし中小企業でしかも新規事業の場合は、経営者の旗振り一つで会社の業績が決まるため、判断の遅れや経験不足は命取りとなりかねません。
こうした点を踏まえて、事業計画書作成時や面談時には業務経験について、しっかりと伝えましょう。これまでの業務経験がこの事業にどのように役に立つかを、具体的なエビデンス(社内での実績・取引先数・資格等)を交えて説明しましょう。相手は金融機関ですので、借りたお金を確実に返すだけの収益は上げることができますというところに結びつけます。
4、経験不足の場合には?
もし業務経験が少ない場合は補強材料を用意しましょう。
・自己資金や返事対応力が十分にある
・業界に精通したコンサルタント・税理士などが入っている
・販売先がすでに固まっている
・高い技術力がある
そのうえで申込金額はできるだけ小さくする方が無難です。未経験者が大きな投資でスタートすることはリスクを高めることになります。日本政策金融公庫の融資でも雇用創出要件を充たせない場合、融資限度額は1000万円以下になっています。
また実際に業務に疎い経営者の元で優秀なスタッフを雇うのは意外に難しいものです。油断していると手を抜かれたり、取引先ごと引き連れて退職されたりすることもあります。まずは経営者自身が業務に精通していることが大切です。いざとなれば一人で会社を回すつもりでコンパクトにスタートしましょう。
5、まとめ
夢や理念も大事ですが、事業として成り立たせるには、経営者本人がその事業に精通している必要があります。とくに融資申し込みをスムーズに進めたいのであれば一定程度業務経験を積んだうえで行いましょう。