自己資金と創業融資実行額

自己資金と創業融資実行額

自己資金と創業融資実行額

 

 

内容

1.自己資金とは

2.制度融資における自己資金要件

①日本政策金融公庫 新創業融資制度 日本政策金融公庫の創業融資は、最も利用頻度の高い制度融資です。

②信用保証協会 制度融資

③女性・若者・シニア創業サポート事業

3.創業融資実行額

4.審査する側からみた自己資金 審査する側にとっては、自己資金が十分にあるというのは、経営の安定性という意味でポイントが高くなります。

5.自己資金のエビデンス

6.まとめ 創業融資においては

 

 

 

今回は自己資金と創業融資実行額について解説します。

 

 

1.自己資金とは

創業融資における自己資金とは「事業に使用される予定の資金」をいいます。

事業に必要な資金の調達方法としては①自己資金(自己資本・自分の資金から調達する)か、②他人資金(他人資本・他人から調達する)の2通りになります。

 

創業融資などの融資による調達も「他人資金」に該当します。

自己資金の場合は、経営者の資産は減りますが、会社としては返済義務がないため安定した資金になります。

一方他人資金の場合は、経営者の資産は減りませんが、会社としては返済義務が発生し、金利支払いも必要となります。

 

自己資金による調達の方が経営の安定性が高いことから融資審査でも評価が高くなります。

事業に必要な資金 自己資金

経営者本人の預貯金

家族・知人からの出資・贈与等

他人資金

日本政策金融公庫からの借入

金融機関からの借入

消費者金融からの借入

家族・知人からの借入

 

 

2.制度融資における自己資金要件

創業融資における自己資金要件は制度により異なります。

①日本政策金融公庫 新創業融資制度

日本政策金融公庫の創業融資は、最も利用頻度の高い制度融資です。「新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を1期終えていない方は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金(事業に使用される予定の資金をいいます。)を確認できる方
ただし、「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方」「産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める方」等に該当する場合は、本要件を充たすものとします。」
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/04_shinsogyo_m.html

以前は必要資金の3分の1以上でしたが、現在は10分の1以上に緩和されています。

 

 

②信用保証協会 制度融資

都道府県や市区町村で行われる信用保証協会の制度融資も利用者の多い融資です。各保証協会により自己資金要件は異なります。

 

東京信用保証協会 要件なし

https://www.tokyo-sogyo-net.jp/finance/seido_yuushi.html

制度融資・信用保証協会 2分の1~3分の1以上

 

 

③女性・若者・シニア創業サポート事業

東京都が信用金庫・信用組合と連携して運営している「女性・若者・シニア創業サポート事業」の融資制度です。

 

自己資金の要件 なし

 

 

3.創業融資実行額

これらの制度融資は民間の金融機関から融資を受けることに比べると出やすいといわれていますが、注意しなければいけないのは、希望の融資額が満額実行されるというわけではない点です。
上記はあくまでも申込時の要件であり、例えば日本政策金融公庫の新創業融資の場合などでも、必要資金総額の10分の1の自己資金を確保すれば、申込みはできますが、実際の融資実行額は減額される場合もあります。「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方」などは、自己資金が無くても融資を受けられますが、あくまでも申込ができるという意味です。

事業内容や借入規模によっても異なりますが、目安としては3割程度を用意しておきましょう。

 

4.審査する側からみた自己資金

審査する側にとっては、自己資金が十分にあるというのは、経営の安定性という意味でポイントが高くなります。

事業に必要な資金のうち借入によって調達する割合が大きくなれば、その分毎月の返済額も多くなり、金利支払いも多くなります。創業してからも事業が軌道に乗るまでは時間がかかるものです。資金繰りの安定性を考えると自己資金の準備は手厚い方が評価は高くなります。

同じ自己資金を準備するにしても、どの様な方法で準備したかもポイントです。
自分自身でコツコツと自己資金を準備していた場合には、貯蓄可能な収入を得る能力があったということです。今回の開業に向けた準備を計画的に進めていたという実績が確認できます。
家族などから援助を受けた資金であっても、もちろん問題はありませんが、自身で準備した資金の方が、経営者のお金に対する考え方が認めてもらいやすくなります。

融資審査では事業計画書の実現性が厳しく審査されますので、お金に対する考え方がしっかりしている経営者の場合はこれまでにも計画的に貯蓄が出来ているだろうと判断されるのです。

 

5.自己資金のエビデンス

自己資金のエビデンスとしては原本の通帳などを提出できるようにしておきましょう。
以前、民間金融機関のアパート融資で発生した事例ですが、融資を通りやすくするために、アパート業者が自己資金のエビデンスを改ざんし、預金金額を水増しして申込みをしていたという問題がありました。今後は、融資申込時における自己資金のチェックは厳しくなるものと思われます。

 

6.まとめ

創業融資においては

・自己資金は経営の安定性を示すため重要な要素
・融資実行金額を確保するには自己資金は多く準備する(目安は3割)
・自己資金の貯蓄方法を説明できるようにすることがポイントです。