実務経験と創業融資
目次
1.お金を貸したいと思わせる人とは?
①自分なら誰に貸したいと思うか
もしあなたが事業を始めようとする人にお金を貸すとします。
その事業について実務経験の長い人と、実務経験のない人のどちらにお金を貸しますか?
普通考えると実務経験がある人の方が安心してお金を貸すことができます。
理由としては、一定のノウハウも持ち合わせており、事業が軌道に乗るまでの期間も短く、貸したお金が返ってくる確率が高いように思えるからです。
②実務経験のない人には貸したい?
実務経験のない人の場合はどうでしょうか。
まったく実務経験がない人にお金を貸すには、やはり抵抗があります。経験者が事業をやっても「こんなはずじゃなかった」ということがたくさんあるので、実務経験のない人ならなおさらです。
③貸したいと思われる人はどんな人?
ではどんな人ならお金を貸しても大丈夫なのでしょうか。
例えば
・その業種での実務経験はないが、いくつかの事業を経営しマネジメント経験が豊富な人
・自己資金が十分にあり、いざというときにはお金を払える人
2.融資時のける実務経験
創業融資の専門家でたくさんの事例を経験している日本政策金融公庫では実務経験をどのように審査基準の中に設定しているのでしょうか。
日本政策金融 新創業融資制度
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/yoken_shinsogyo.html
(以下抜粋)
雇用創出等の要件
(省略)
3.現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方でいずれに該当する方
- 現在の企業に継続して6年以上お勤めの方
- 現在の企業と同じ業種に通算して6年以上お勤めの方
4.大学等で習得した技能等と密接に関連した職種に継続して2年以上お勤めの方で、その職種と密接に関連した業種の事業を始める方
(省略)
9.前1~8までの要件に該当せず事業を始める方であって、新たに営もうとする事業について、適正な事業計画を策定しており、当該計画を遂行する能力が十分あると公庫が認めた方で1000万円を限度として本資金を利用する方
こうしてみると、同業種での会社員としての経験は6年以上というのが一つ目安となっています。6年程度の経験があれば、独立開業しても、やっていけるだけのノウハウを身につけられた人が多く、それ以下の場合は開業してもうまくいかない人が多かったということでしょう。
また大学等で習得した技能等と密接に関連した事業の場合は、2年以上が基準となっています。これは研究や高い技術を売りにする場合には、事業としての実務経験としてあまり関係なく、技術力や商品開発力そのものが重要ということを表しています。
こうした要件に当てはまらない人の場合は、基本的には対象にはなりにくいということです。実務経験のない分野での創業はリスクが高いということでしょう。それを回避できる方法としては「実現性の高い事業計画を策定する」「当初計画の借入限度は1000万円を限度とする」ということです。事業計画を精緻に策定し、当初から規模を拡げすぎずに行うことがポイントです。
3.まとめ
実務経験のない事業分野の融資は、条件は厳しいと考えましょう。
未経験の分野での創業はやはりリスクが高いことに違いはありません。そもそもの事業計画の妥当性が確認できないからです。創業する前に、同業他社などで一定期間働く等してノウハウを吸収しておく方が無難です。