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損益計算書(PL)とは
損益計算書とは、その期間の利益を計算するものです。
利益は、売上から変動費と固定費を差し引いて計算しますが、金融機関に提出する際はもう少し細かく分かれます。
①売上
②売上原価
③売上総利益(①-②)
④販売費及び一般管理費
⑤営業利益(③-④)
⑥営業外収益
⑦営業外費用
⑧経常利益(⑤+⑥-⑦)
金融機関には、事業の見通しとして損益計算書を提出します。
PLを作成する前に
売上げを、まずは変動費と固定費というおおきなくくりに分けてみましょう。
ちなみに変動費とは、売上に応じて変化する費用のことで、固定費とは売上げがゼロでも発生する費用のことです。
飲食店については、変動費は一般的に売上の65%ぐらい、固定費は25%ぐらいとして経常利益が10%程度あれば問題ないでしょう。
そのような数値になるように、計画を作成します。
作成する順番は、次の通りです。
固定費は、必ず支出する費用です。つまり、売上がなくても出ていくもののため、固定費を差し引いても利益がでるように、固定費から逆算して売上を算定するとよいでしょう。
売上から先に決めてしまうと、計画自体がマイナスとなった場合、やり直しとなるからです。
1.固定費
ここでいう固定費とは、地代家賃、リース代、通信費、減価償却費、借入利息、その他経費のことを指します。
一般的にこれらの数値合計が、売上げの25%と設定します。
①地代家賃
物件の家賃のことです。10%以内ぐらいが望ましいとされております。
②リース代
レジや各種備品をリースで借りる場合があります。
そのリース費用も固定費として計上されます。
③通信費
電話代やインターネット代が計上されます。
④減価償却費
減価償却費とは、設備投資した資産を、一定の年数に従って費用化していくものです。
ちなみに、内部造作した場合の耐用年数は、その内容によって異なってくるため、専門家に相談した方がいいでしょう。
⑤借入利息
借入総額に対する利息を計上しましょう。
なお、利率は日本政策金融公庫の基準利率を参考にします。
また、通常借入金を返済すると元本が減るため利息も減っていきますが、ここでは同額の利息を計上しても何ら問題はありません。
なぜなら、多めに利息を計上しても利益がでるようにすればいいのです。
⑥その他経費
広告費や衛生費、交際費等を計上します。
項目については、しっかりと事業に必要な項目であることを前提に考えましょう。
2.売上
固定比率を25%と設定した場合、売上は固定費の4倍となります。
4倍として計算した金額を、さらに次の項目に分けてみましょう。
※回転数は一日あたりの回転数
①席数
借りる物件の目安となる席数はどれくらいかを把握します。
参考までに、一坪あたり1.5席を通常と考えてください。
なお、ゆったりとくつろぐお店をコンセプトにしているのであれば、一坪あたり1席がよいでしょう。
※一坪とは、3.3㎡(1.8m×1.8m)です。
②回転数
満席になった状態が、何回転するのかを予測します。
一日あたり一回転以上はほしいところです。
③営業日数
営業日数は、週一休みであれば、約25日です。
もちろん、平日と休日とで回転数が変わるため、営業日数で調整しましょう。
④客単価
客単価を決める算式は、固定費の4倍が売上総額としなければいけないため、次のようになります。
固定費の4倍の数値(売上総額)を、席数×回転数×営業日数の数値で割ると、売上の単価が出てきます。
3.変動費
変動費は、売上げの65%ぐらいにしましょう。
ここでの変動費は、売上原価、人件費、水道光熱費となります。
①売上原価
売上原価を決める際、まずは下記の表を参考にしてください。
従業員
1~4名 |
一般飲食店 | 食堂、レストラン | 一般食堂 | 日本料理店 | すし店 | 酒場、ビヤホール |
原価率 | 36.8% | 36.5% | 38.1% | 37.4% | 43.9% | 31.5% |
人件費率 | 30.8% | 30.9% | 31.7% | 29.9% | 27.2% | 33.8% |
※日本政策金融公庫の2017年度「中小企業の経営等に関する調査」より
変動費を65%以内にするならば、原価率と人件費率合わせて60%ぐらいにすることが望ましいといえます。
したがって、原価率は売上客単価の30%ぐらいを目安に設定しましょう。
原価率の設定は、原価表等を用いて、品目ごとに原価率をバラつかせて、集客商品を高めの原価率で設定し、稼ぐ商品を原価率低めに設定して、トータルの原価率が30%ぐらいになるように設定しましょう。
②人件費
人件費の決め方は、何人必要なのか、いくらが妥当なのかを考えて決めましょう。
- 何人必要なのか
お店の席数に対して従業員何人かを決めます。
一般的には10席に対して店員一人といわれております。従業員が慣れていないのであれば、7席に一人といったように調節しましょう。
- いくらが妥当なのか
日本政策金融公庫の2017年度「中小企業の経営等に関する調査」によると、原価率と人件費率は下記の通りです。
従業員
1~4名 |
一般飲食店 | 食堂、レストラン | 一般食堂 | 日本料理店 | すし店 | 酒場、ビヤホール |
原価率 | 36.8% | 36.5% | 38.1% | 37.4% | 43.9% | 31.5% |
人件費率 | 30.8% | 30.9% | 31.7% | 29.9% | 27.2% | 33.8% |
このようにみると、飲食業において人件費率は30%以内が妥当ラインと考えられます。
クレームにつながるため必要人数は必ず確保し、人件費率が高くなってしまう場合は、自己の役員報酬で調節したり、社員でなくアルバイトにする等で調整しましょう。
また、時給いくらで何時間何名働くのかもきちんと算出し、その金額と整合性を合わせましょう。
③水道光熱費
水道光熱費は、売上の5%程度と考えればよいでしょう。
4.借入額が現実的か?
事業計画書に記載した借入額を何年で返済できそうか計算してみましょう。
(税引後経常利益+減価償却費)÷借入額
この算式で、何年で借入金を返済できるのかがわかります。
この返済期間が、融資制度の借入返済期間を超えていたら、計画のやり直しです。
必ずこのチェックは行いましょう。
なお、運転資金であれば7年以内、設備であれば10年以内とお考え下さい。
5.PLへの当てはめ
ここまで来たら、終わったも同然です。
あとは変動費と固定費にわけた簡易的なPLを、細分化したPL科目に沿って数値を入れれば完成します。
6.おわりに
PLの作成方法は、イメージできましたでしょうか。
損益計算書は専門用語で作成されるため、作成するのに慣れている専門家でないとキツイ部分はあると思います。
作成するにあたって、少しでも不安がございましたらご弊社へ相談ください。